追い詰められて、逃げ道がないと感じるとき

ちょこっと養生

~東洋医学で読み解く “気滞”のこころとからだ~

なんとなく、息苦しい。
がんばっているのに、空回り。
心の奥で「もう無理かも…」って小さな声がしても、それを聞き流してまた立ち上がる。

でも、ある日ふと気づくんです。
「あれ?私、ずっと逃げ道のないところで立ち尽くしてたかも」って。

東洋医学では、こんな心と体の状態を「気滞(きたい)」と呼びます。

“気”は、目には見えないけれど、私たちをめぐり、支えてくれるエネルギーのようなもの。
その“気”がスムーズに流れていれば、心もからだも自然と軽やかに動いてくれます。

でも、ストレスが続いたり、自分の気持ちを押し込めたり、
感情を表に出せない日々が続くと……
気はだんだんと滞ってしまいます。

気滞のサインは、心と体、両方に現れる

  • イライラしやすい
  • のどが詰まるような違和感がある
  • ため息ばかり出る
  • 胸やお腹が張って苦し
  • 便秘やガスが多い
  • 月経前に気分が落ち込む or 攻撃的になる
  • 何かに縛られているような焦燥感がある

「逃げ道がない」と感じるのは、
本当に逃げ道がないのではなく、
気がめぐっていないから、見えなくなっているのかもしれません。

東洋医学では、そんなときこそ、まず“流れ”を取り戻すことを大切にします。
水が濁ってしまったら、無理にかき混ぜるよりも、
そっと風を通してあげるように——。

気滞をやわらげるために、できること

✔ 深呼吸して、ゆっくり吐く
 → 呼吸は気の出入り口。まずは「出す」ことから。

✔ よくしゃべる(誰かとでも、一人でも)
 → 感情をため込まず、「声に出す」ことが大切。

✔ 香りを取り入れる(柑橘系・ラベンダー・ローズなど)
 → 香りは、滞った気をそっと動かしてくれる力があります。

✔ 軽い運動やストレッチをする
 → からだの気の流れを整えると、心もすっと整います。

✔ ハーブや薬膳の力を借りてみる
 → 例えば、陳皮(ちんぴ)、玫瑰花(まいかいか/ローズ)、薄荷(はっか)など。
  気の巡りを整えるお茶や薬膳酒もおすすめです。

無理に前に進まなくても、
「ちょっと一息つく」ことも、立派な気の養生。

気滞の状態に気づくことは、
がんばりすぎていた自分に、そっと寄り添う第一歩です。

逃げ道がないように見えても、
実は目の前には、見えない風がそっと吹いているかもしれません。

🌿おすすめ薬膳茶:香りで気を巡らせるブレンド

玫瑰花(まいかいか/食用ローズ)+陳皮(ちんぴ)+ジャスミン茶

効能:
・気の巡りを整えて、イライラや緊張を和らげる
・お腹の張りや、ため息が多いときにも◎
・女性の月経前の不調(PMS)にもおすすめ

つくり方:

  1. 乾燥玫瑰花:2~3輪
  2. 陳皮(みかんの皮を干したもの):小さじ1
  3. ジャスミン茶:ティースプーン1杯

すべてをポットに入れて熱湯を注ぎ、3~5分蒸らしていただきます。
ほんのり甘い香りと華やかさで、心がふっと軽くなります。

🍶おすすめ薬膳酒:気を巡らせる、香りの薬膳酒

陳皮とローズの薬膳酒(つくりやすい分量)

材料:

  • 陳皮(市販の乾燥タイプ)10g
  • 玫瑰花(乾燥ローズ)10g
  • 氷砂糖 50g(お好みで)
  • ホワイトリカーまたは35度以上の焼酎 500ml

作り方:

  1. 瓶を煮沸消毒して乾かす
  2. 陳皮・ローズ・氷砂糖を瓶に入れる
  3. ホワイトリカーを注いで封をする
  4. 冷暗所で1か月~熟成(毎日軽く瓶をゆする)

香りの高さとほんのり甘さが気持ちをほどき、「もう大丈夫」と言われたような安心感に包まれます。お湯割りや炭酸割りがおすすめ。

🍷すぐにできる簡単薬膳酒 ~気を巡らせて心ほどけるレシピ~

ローズ&柑橘のワインスプリッツァー

材料(1杯分)

  • 白ワイン:100ml(冷えたもの)
  • 炭酸水:50~100ml
  • ドライローズ(玫瑰花):少々(食用のもの)
  • オレンジやレモンの皮(無農薬・よく洗う):少々

作り方
グラスにローズと柑橘の皮を入れて、白ワインと炭酸水を注ぐだけ。軽く混ぜて、香りを楽しみながら飲んでください。

薬膳的ポイント

  • ローズ:肝の気を巡らせ、イライラや緊張をやわらげます
  • 柑橘の皮(陳皮の代用):脾と肺の気の巡りを助け、気滞による胃の張りなどにも◎

ウイスキー+黒胡椒+はちみつのお湯割り(気滞タイプの夜の安らぎに)

材料(1杯分)

  • ウイスキー:30ml
  • はちみつ:小さじ1
  • 黒胡椒(粗挽き):ひとふり
  • お湯:100ml

作り方
グラスにすべてを入れて、よく混ぜるだけ。
ピリッとスパイスの刺激で気を動かし、甘さと温かさでリラックス。

薬膳的ポイント

  • 黒胡椒:身体を温めて気の流れを活性化
  • はちみつ:心と身体をやさしく潤す

焼酎+しそ+梅干し(和ハーブで気を巡らせる)

材料(1杯分)

  • 焼酎(または泡盛):30〜60ml
  • 青じそ(生):1〜2枚(軽く手でちぎる)
  • 梅干し(塩分控えめがおすすめ):1個
  • 水または炭酸水:100〜120ml

作り方
グラスにちぎったしそと梅干しを入れ、焼酎・水または炭酸水を注ぎます。梅を崩しながら香りと味を楽しんで。

薬膳的ポイント

  • しそ:気を巡らせ、ストレスによる食欲不振や胃のもたれに
  • 梅:肝を助け、気を下ろしてくれる作用があります

🍴手軽にできる!養生レシピ:気を巡らせるやさしい一品

セロリと柑橘のさっぱりマリネ

材料(2人分):

  • セロリ:1本(斜め薄切り)
  • みかん or オレンジ:1個(皮をむいて薄くスライス)
  • オリーブオイル:大さじ1
  • レモン汁 or 酢:大さじ1
  • 塩:少々
  • 黒こしょう:少々

作り方:

  1. 材料を全て混ぜて10分ほどなじませるだけ。

ポイント:
セロリは気を巡らせ、精神を落ち着かせるとされる食材。柑橘の香りと酸味が気滞の停滞感をスッと流してくれます。

🫧もうひとつ、おまけの習慣

薬膳は「日々の積み重ね」が大切。
毎日じゃなくていいんです。
「今日はちょっとつらいかも…」そんなときの、あなたの“逃げ道”や“風の通り道”として、香りのある一杯や一皿をそっと添えてみてくださいね。