織り、巡り、また出逢う ~東洋から眺める七夕の夜~

コラム

夜空を見上げたとき
ふと、あのふたりを思い出す。

一年に一度、天の川を渡って、織姫と彦星が出逢う七夕の夜。
遠く離れて、でも、ちゃんと繋がっている——そんなふたりの物語には
東洋のやさしい哲学が、そっと息づいています。

天の川は、ふたりを隔てる存在でもあり、ふたりを再び結びつける道でもある。
離れることと、出逢うこと。
陰と陽のように、相反するものが静かに調和して、巡っていく——
七夕はそんな、東洋のバランスの美しさを映した夜かもしれません。

短冊に願いを書く。
その行為は、ただ夢を託すだけじゃなくて、
自分自身の小さな願いと、静かに向き合う時間でもあります。
願いを書くときに、どこかで「どうか叶いますように」と
自然や宇宙にそっと手を合わせる。
そんな姿が、東洋哲学の“調和”や“徳”の心に、ふっと重なります。

七夕に使われる五色の短冊
赤・青・黄・白・黒。
これも実は、「陰陽五行」の考えと繋がっていて、
火・木・土・金・水という自然の五つのエネルギーが、色に映し出されています。
願い事を短冊に託すとき、
人の想いは、まるで自然や宇宙の流れに溶け込むように、そっと馴染んでいく。
それもまた、東洋の世界の美しさ。

織姫と彦星は、毎年めぐる時間の中で、また出逢う。
その繰り返しは、仏教でいう“輪廻”の考えにも、どこか重なって見える。
めぐり、まためぐり、
私たちの小さな願いも、日々の選択も、きっとこの世界にやさしく響いていく。

天の川を渡るということは、
もしかしたら、私たちが「自分の道」を歩いていくことに、似ているのかもしれない。
迷いながらも、一歩ずつ、自分だけの橋を渡っていく——
それが道教でいう「道(タオ)」に、そっと重なるようにも思います。

織姫と彦星が、陰と陽を象徴するように、
この世界も、宇宙も、すべてが陰陽のバランスでできている。
星が輝く夜空には、明るさ(陽)と静けさ(陰)が、美しく同居していて、
そのリズムが、季節を巡らせ、私たちの日々をゆっくりと運んでいる。

星を見上げる夜に、
誰かのことを思い出したり、
過去の自分と静かに出逢ったり——
きっとそれも、織り、巡り、また出逢う、私たちの小さな七夕。