〜時間が醸す、やさしい記憶。焼酎の前割という飲み方〜

薬膳酒

梅雨の合間、しっとりとした風が部屋に流れ込む夕暮れ時。
ふわりと立ちのぼる香りに、ふと心がほどける瞬間がある。

この日、私が手にしていたのは、
薬膳茶で割って前日に仕込んでおいた「前割」の焼酎。

焼酎の前割という飲み方、知っていますか?

「前割(まえわり)」とは、
焼酎をあらかじめ水で割り、数時間から一晩、できれば1週間ほど寝かせてから飲むスタイルのこと。

焼酎と水が時間をかけてなじむことで、まろやかで柔らかな口当たりになり、香りも立ちやすくなる。

この“寝かせる”という行為は、まるで記憶の中の出来事が、時を経て優しい思い出に変わっていく感覚にも似ている。

だから私は、そんな前割に薬膳茶を使ってみた。

薬膳茶を使った前割で、心と体にやさしい一杯を

普通は水で割る前割だけれど、私はそこに、黒豆やなつめ、クワンソウなど、やさしく身体に寄り添う薬膳茶を選ぶ。

水の代わりに薬膳茶を使えば、浸出させたい素材の成分も一緒に染み込んで、お酒そのものが“心と体を緩める薬膳酒”になる。

一晩寝かせたそれは、やわらかくて香り高く、まるで誰かと過ごしたぬくもりが、グラスに宿っているかのよう。

香りも味も、記憶をそっと紡いでくれる

「香り」や「音」がふとした記憶を蘇らせることがあるように、前割焼酎のやさしい香りにも、思い出が溶け込んでくる。

なつかしい曲を聴きながら、紅茶の香りに昔の恋を思い出すように、薬膳酒の香りもまた、あなたの中の記憶にふれるかもしれません。